アメリカの田舎で暮らしています

年下夫と猫のここちゃんとの暮らし。ジョージア州でRN(看護師)してます。

食べ物が欲しい、と言われた話し

こんにちは、ちぃです。

 
その日。ここちゃんと一緒に庭にいたら、黒人女性が通りかかりました。”Hello! How are you?”と聞かれたので、普通に返事をしたら、どんどんこっちに近づいて来て。
 
 “お腹が空いてるんだけど”、と。
 
そもそもたばこは我が家にはないし、お酒ある?とかタバコある?って言われたらお断りする予定だったけど、お腹空いてるなら、と思ってお腹の足しになりそうなバナナとクラッカーを渡しました。
 
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少し前に患者さんとして出会ったTさん。60代のホームレス男性です。教会のベンチに10日位座り続けてたら動けなくなっちゃって、近くを通った人が気付いて911に電話してくれたそうです。ERに着いた時、足にはウジが湧いていたとか。
 
自殺願望のある患者さんには、自殺しないようにシッターと呼ばれる監視する人が付くのですが、彼はずっと死にたい、と口走っていたので、わたしの病棟に入院して来た日、わたしは彼のシッターでした。
 
ホームレスとかウジが湧いてる、とか本人に会うまではTさんに対して全然良いイメージはなくて。ウジだってー!とナースステーションでも皆んな彼と関わるのを嫌がってる感じ。
 
ところが、偶然Tさんの出身地とわたしの留学していた街が近かったりで、シッターとして12時間一緒にいる間たくさん話しができました。お母さんが亡くなった7年前からホームレスをしてる事。家族は誰もいない事。今生きてるのが辛い事。早く天国で楽になりたい事。だけど、自分の好きなテレビを見るのは申し訳ないから、2人で一緒に楽しめる番組を見ようよ、とか言ってくれる人で。
 
躁鬱病を患っていたので機嫌のいい瞬間ばかりではなく、むしろ、翌日は別人の様に冷たい態度だったり、と言う感じでした。幻聴もあったので、たまにブツブツ言ってて。何が聴こえるの?と聞いてみたら、お前なんか死んじゃえ、みたいな感じの事が聴こえる、って言ってました。
 
昔の同僚の娘さんも躁鬱病を患っていたのですが、職に就ける状態ではなく、障害者年金をもらってたみたいです。多分Tさんも同じ状態なんだろうけど、自分で障害者年金を申請する事もなく、お母さんが生前申請してくれる事もなく、どうしよもなくなってホームレスになるしかなかったのかな、と。もちろん躁鬱病の薬も服用してません。
 
最初の頃こそわたし達を突っぱねる態度の日も多かったTさんでしたが、1ヶ月以上入院するうちに気分が安定してきてました。テックの立場で、患者さんの薬の情報を知る事はないですが、躁鬱病の薬が効いてきたのかも、ですね。初めの頃こそスタッフに嫌がられていたTさんでしたが、時がたつにつれてそんな事はなくなっていました。
 
安定してくる=退院が近づく、という事。
リハビリを通して何とか立ち上がる事はできるようになっていたようですが、歩ける、とかいう状態ではなかったはず。だけど、わたしが休みの日に退院していました。
 
出勤して、Tさんが患者さんリストの中から消えているのを発見したので、Tさんは一体どこに行ったの?と同僚に聞いてみたら、またホームレスになったんだと思う、と。
 
新品ではないけれど、誰かから寄付された洋服も靴も全部拒んで一切受け取ろうとしなかった(ジャケットだけは受け取ったみたいです)。施設の様な所へ行く提案もされたようですが、それも断った。躁鬱病の薬もお金はもらわずに何日か分を手渡そうとしたけれどそれも断った。だから、ホームレスになるしかないと思う、と。
 
Tさんが退院した数日後、この辺りの最低気温が今年初の氷点下になりました。
1か月以上も病院の中で、温かい環境で生活していた彼がいきなり氷点下の環境で凍えてないかな。食べ物はあまり食べずに、栄養補助剤のプロテインシェイクみたいなを好んで飲んでたけど、誰かから食べ物をもらえてちゃんと食べれてるかな。便失禁があったけどちゃんと綺麗にできてるかな。
時折Tさんの事が心配になって、時折Tさんの事を考えてしまいます。
Tさんを担当する機会は、シッターとして関わった後あまりなかったのですが、気になってちょくちょく顔を見に部屋には顔を出してました。退院の1週間位前に部屋に行った時、Tさんから突然言われた言葉、”ちぃ!Love you!”が忘れられません。え?と一瞬思ったけど、”Love you too!”って返せて良かった。
 
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Tさんが入院中、普段食べ物はどうやって調達していたの?とTさんに聞きました。
道行く人がくれてたみたいです。
いい加減な事もたくさんあるこの国だけど、困ってる人に手を差し伸べる事もできる良い面もちゃんとある国です。
 
そんなTさんが退院した直後に、自宅の前で黒人女性からお腹が空いてるんだけど・・・と言われたので、気の利いた食べ物はなかったけれど、少しでも栄養になってお腹にもたまりそうなバナナを渡しました。
 
スーパーの駐車場等でホームレスを見かける事がよくあって。
今まで何かを渡した事はなかったけれど、たまに食べ物をもらってる現場に出くわす事はありました。元々ホームレスや生活弱者の生活にはとても興味があって、昔不法滞在の人たちが通える無料のクリニックで看護師のボランティアをしてた時期もありました。これから、わたしもたまに食べ物を渡したり、実習が終了して時間に余裕ができたら、ホームレスに関するボランティアをしてみたいな、なんて考えている最中です。